パートタイマーに退職金
Y市内でレストランを経営するB社の事例です。
勤続15年になるパートタイマーの星さんは、
母親の介護のためやむなく仕事を辞めることとなりました。
就業規則には「退職金は勤続5年以上の者に支給する」
となっていたため、星さんは退職金を親の介護の必要資金に使おうと考えました。
「社長、長い間お世話になりました。」
「星さん、こちらこそありがとう。
本当にお疲れ様でしたね。介護は大変だけど頑張ってくださいね。」
「ありがとうございます。ところで、社長、私は退職金をどれくらいもらえるのですか?」
「えっ、退職金? 申し訳ないけど退職金は正社員にしか出ないよ。これまでパートさんには払ったことはないし。」
「確かにそうかもしれませんが、勤務が短くて辞める人ばかりですよね。
私は15年も働いたのですからもらう権利があると思いますが。
就業規則にもパートタイマーに退職金は支給されないとはどこにも書かれていませんよ。」
「いや、そんなこと言われても・・・。」
最後まで会社から退職金を支払うという返事をもらえなかった星さんは、どうしても納得できなかったため労働基準監督署に相談に行き、その結果150万円もの退職金を支払うことになりました。
これもきちんと就業規則に定めておけば防げた問題です。せっかく15年もB社のために頑張ってきてくれた従業員がこのような形で退職するのは悲しいことです。
日頃、従業員とのトラブルがないときは就業規則の存在はわかりにくいものですが、事例のように一旦問題が起きてしまうと、余計な出費がかさむだけでなく、解決のために無駄な労力と時間を要することになり、さらに従業員の信頼も失ってしまうこともあるのです。